パートナーである以上、基本的にご主人の傍を離れるってことはない。
けど、ご主人にはご主人の都合があるように、僕には僕の事情があるわけで。
時折、“パートナー”って関係を歯がゆく思う。
「ピカチュウ。やはり今日は、ご主人たち隣の部屋でしょうか」
たとえば、目の前でやれやれとため息をついた彼に逢いたくなった時。
「鍵の音してたし、そうだと思うよ」
イーブイが体を休めるブランケットに潜り込ませてもらいながら、僕は隣の部屋へと続くドアを見上げた。
木製の淡い色のそれは、取っ手の部分が妙に頑丈そうにできている。
静かな威圧感とでも言うのかな。
部屋の持ち主であるグリーンさんに、どことなく似ていると思う。
「一応、隣に僕たちがいる事は判っているんでしょうけど」
「気にはしてくれないよね。こういう時は」
現在進行形で。
ベッドが軋む音はギリギリセーフとしても、あられもない声はダメだと思うよご主人。
防音機能のある壁とかにリフォーム希望。
「…まぁ、ようやく長年の誤解が解けたんです。しばらくは黙って見守っておきましょう」
「…イーブイ、放っとくときっとずっとあのままだよ」
「…」
うちのご主人あれで嫉妬深いし。
イーブイのとこのご主人はツンデレなうえに一途だから。
「いっそ嫁にきちゃえばいいのに」
そうすれば僕はイーブイと一緒にいれるし。
ご主人たちも幸せなはずだ。
「どちらかと言うと、ピカチュウのご主人がお嫁さんに来るべきでしょう」
役割的に、と尻すぼんだ言葉はスルーしておいた方がいいんだろう。
それにどっちみちご主人たちが一緒にいてくれれば問題ない。
けど。
現実的には難しいから。
「ね、イーブイ」
呼びかけたら、返事の代わりに尻尾を振った彼と目が合う。
「前に言った事考えてくれた?」
ほんの少しだけ揺れた身体と泳いだ視線は、肯定ってとっていいのかな。
「嫌なら嫌でいいから。答え、ちょうだい?」
「…今、ですか?」
「うん。僕待ったよ?」
前回ここに来たのは、まだマサラやトキワにも雪が残る頃。
今はもう、すぐそこまで夏が迫ってる。
「好きだよイーブイ」
あの時言った事を繰り返して、俯いてしまった彼の頬を舐めて笑う。
ずるいのは知ってる。
前提になるイーブイの気持ちを知った上での告白だから。
遠距離だし。ご主人たちの接触機会はこれからもそう増えない気がするから、めったに逢えないし。
ご主人たちみたいにギアを使って通信もできない。
けど彼は寂しがり屋さん。
「僕のお嫁さんになってください」
環境は悪いんだけど。それでも良いってちゃんと保障みたいなのが欲しくて。
ワガママを言った。
「何言ってるんですか、もう…」
唇を寄せられて、言葉で欲しいとねだったら容赦ない頭突きをくらう。
でも、幸せだからいいや。
誓いのキスを!
ねぇご主人ご主人、お嫁に行って。
それからこの子を、僕のお嫁さんにください。